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なぜかメディアに無視された「イカ塩辛食中毒事件」

2007年の暮れに行われた、全国消費生活相談員協会主催の講演会に松永和紀氏が登壇し、件の食中毒事件について触れられたとき、私も含めて聴衆にどよめきが走りました。

2007年といえば、赤福・白い恋人・三笠フーズ・船場吉兆と、食品偽装事件が多数発覚し、大いにメディアを賑わせた年です。その一方で、イカの塩辛による腸炎ビブリオで600人も健康被害が出ているのに、そのことは全くと言っていいほど報道されていないというのです。

600人の大規模食中毒事件、なぜかマスメディアは沈黙

宮城県、食中毒、塩辛をキーワードにgooで検索すると377件が表示され、上位100件を調べるとほとんどが厚労省や自治体のもので、マスメディアでは「NIKKEI NET いきいき健康」と「Sponichi Annex」の記事だけが見つかりました。この検索だけで断定はできませんが、大手のマスメディアが大きく報道した事実は少ないと思います。

厚労省や自治体の発表があったので、知らなかったということは考えられないわけで、ごく一部を除いて新聞とテレビは報道の価値がないと判断した結果であると思われます。

9月19日から月末にかけて国や数十の自治体が健康被害の拡大を防ぐための報道発表などにより注意喚起をしていますが、患者数は9月19日の発表では217名、28日の発表では354名、10月15日には593名となり、拡大が防止されたとは言えません。一般のマスメディアの協力なしでは当然といえる結果です。

不二家、ミートホープ、吉兆など、賞味期限の不正表示、産地の偽装表示など、実際の健康被害を伴わないもの、その可能性すらほとんどないものが何十回となくトップニュースになりました。それに対し、消費者に注意を促して被害の拡大を防ぐために必要な、このかなり大規模な食中毒事件をベタ記事にさえせず、完全に黙殺するとは、いったいどう考えればいいのでしょうか。

さらに不思議なことは特定のマスメディアではなくすべての大手マスメディアが同一行動をとったことです。したがって、これは単なる判断のブレやミスとしてではなく、メディア全体を支配する判断基準の問題として扱ってよいと思います。

広報の放棄は健康被害だけでなく、死者を出す可能性もありました。国民への広報という役割を独占的に担う者として、ここまで無責任に役割を放棄する裏にはどんな事情があるのでしょうか。凡人には想像が及びません。偽装表示問題が、世の中がひっくり返るほどの大事件として報道された事実を考え合わせると、私の頭では理解不能であります。

2007年12月17日07時38分 / 提供:PJオピニオン

厚生労働省:いかの塩辛を推定原因とする腸炎ビブリオ食中毒の発生について

問題のイカの塩辛は、塩分濃度を4%程度に抑えた減塩タイプの製品で、昔ながらの高塩分で保存性を高めた塩辛に比べて細菌性食中毒が起こる可能性が高いと考えられ、海上自衛隊の護衛艦で患者が集団発生したのですが、同じ塩辛を艦内で出しながら患者を出さなかった艦艇もあったということで、食中毒の発生が保存状況によることが示唆されています。

実は、講演でこの問題を取り上げた松永氏自身、2002年の中国産冷凍ホウレンソウの残留農薬問題を取り上げていた頃、ほぼ時を同じくして起きていた、宇都宮市のO157集団発生事件(1995年の堺市を上回る死者を出した)を全く取材していなかったといいます。

コープこうべ:「私たちの健康と他者への配慮」~食をめぐる状況を多面的に語る~

2002年は食中毒で18人亡くなりました。栃木県でO157食中毒事件があり、老人が入る病院とその隣の付属の高齢者保健施設の両方の給食で計9人のお年寄りが亡くなりました。食の事件としては大きなものです。でも、私はこの時にO157菌の食中毒事件を取材していないのです。2002年は中国産の冷凍ほうれん草に農薬が残留していたり、日本の農家が無登録農薬を使ったりで、大騒ぎしていました。私も、こちらの取材に一生懸命でした。残留農薬で亡くなる方はいないのですが。対するO157事件は、9人も亡くなっているのに新聞でも小さい報道となりました。リスクの大小と紙面報道の大小が、一致せずずれています。

食の安全のためには、O157の食中毒がなぜ起きるのかなど、防止方法を私たちは知る必要があります。無登録農薬の情報も大事ですが、リスクの大小からするとO157菌のことをきちんと伝えるべきでした。ところが、人が亡くならない無登録農薬と中国産冷凍ほうれん草で大騒ぎです。そして、私も大学の栄養学の先生から「リスクの高いものを報道しなさい」と怒られて気が付いたのです。

松永氏が怒られたという「大学の栄養学の先生」とは、フードファディズムの項で取り上げた高橋久仁子氏です。

O157による食中毒は、今も毎年のように起きています。ついこの間も三重県の全寮制高校で100人近い中毒者を出す事件が起きたのですが、そのリスクの大きさの割に、マスメディアの扱い、一般市民の反応が小さすぎると危惧するところです。メディアにとっては、もう飽きたネタである「カイワレの菌」でしかないのでしょうか。

ペルーのコレラ事件と、堺市のO157食中毒

1991年に、ペルーでコレラが大流行し、80万人が罹患し、7000人が亡くなるという悲劇を生みました。その原因が、水道水の塩素殺菌によって生成するトリハロメタンの発がんリスクを恐れて、塩素殺菌を止めていたからだというのです。

あるリスクを軽減しようとすると、別のリスクが増大してしまうことを、「リスクのトレードオフ」といいます。トリハロメタンのリスクを軽減しようとするあまり、コレラという、比較にならない大きなリスクを引き寄せてしまったのです。

実は、1995年に堺市で起きたO157食中毒も、ペルーのコレラ事件に酷似した背景があったと言われています。渡辺宏氏のサイト「安心!?食べ物情報」に、次のような投稿が寄せられています。

安心!?食べ物情報469号

トリハロメタンの記事共感をもって読んでおります。いつも貴重な資料、コピーしております。

ペルー政府の失敗は、何を優先すべきかを示す事例として印象的です。この記事は、広く知られてほしいものと思います。

じつは、堺市で起きたカイワレ大根を原因とする腸管出血性大腸菌O157も、教育委員会が、トリハロメタンに必要のない”おののき”を示し、事件から10年前に次亜塩素酸ナトリウムによる野菜等の消毒作業を取りやめていたのです。

もし、カイワレ大根に対し次亜塩素酸ナトリウムによる消毒作業を行っていたら、あの事件は起きていなかった、3人の子供の命を失うことも無かったのにと悔やまれてなりません。

堺市内34校のうち、1校だけは一人の患者も発生していませんでした。その学校では、栄養士の指示で、3時間水道水に浸漬して いたのです。微量の残留塩素と大量の水による菌の希釈で発病に至らなかったことが追試験でも立証されています。

規定の塩素消毒をしていたら、事件は起きていないと言えます。このことは、マスコミもあまり報道されていません。事件後は、ま た、次亜塩素酸ナトリウムを調理場にまき散らしているような状態です。

冷静な科学的知識の徹底のむつかしさを思います。

中西準子著『食のリスク学』にも、この件が引用されています。

「安全なレバ刺し」など存在しない

鳥インフルエンザに口蹄疫……、家畜伝染病が起こるたびに風評被害が出るわけですが(口蹄疫のときも、ごく一部だが宮崎産の牛肉や豚肉を避ける動きがあったといいます)、そもそも、普通の牛肉や豚肉自体、十分に火を通して食べるには問題がないが、生で食べることはリスクが高いのです。O157やカンピロバクター、E型肝炎ウイルス(豚自身が持っている)などの恐れがあります。

「食の安全情報blog」より

ギラン・バレー症候群とカンピロバクター食中毒
腸管出血性大腸菌感染症の予防対策
レバ刺しには食中毒リスクがあります
東京都の調査に見る食肉の生食の実態
食肉の生食は危険です。

飲食店をされている方が、お客さんに「どうしてレバ刺しをしないの?」とよく聞かれるので、それは危険だから店としては出せないとおっしゃっています。

レバ刺しないの?というお客様へ(それ危険なんです)

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