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いまや死に体の「環境ホルモン学会」

10数年前、「環境ホルモン騒動」によって世間は恐怖に陥ったわけですが、今やすっかり忘れられていることでしょう。

農薬のお話:環境ホルモン学会退会の勧め(3) 環境ホルモン学会は2012年度に消滅する。

環境ホルモン学会こと、「日本内分泌撹乱化学物質学会」の会員数が、坂道を転げ落ちるがごとく減少しているとのことです。2004年6月末の時点で個人会員が2050名だったのが、2010年3月末では、およそ半分の1045名になっていると。「農薬のお話」のグレガリナさん曰く、環境ホルモン学会は、環境省が天下り目的に作った「反社会的組織」だと。

幻影随想:環境ホルモン問題

これは2005年のブログ記事ですが、

環境ホルモン問題は依然として環境問題ではあるものの、もはやヒトの健康問題とはなりえない。
というかまともな研究としてはほぼ終了していると言っていい。
というのは現在でもそうでしょう。もはや「ほぼ終了」した「環境ホルモン問題」が生き返ることはないでしょう。

環境ホルモンとは

騒動のきっかけになったのは、シーア・コルボーンらが著した『奪われし未来』でした。ホルモン様の作用を示す「内分泌撹乱物質」をわかりやすく説明するためとして、NHKと井口泰泉・横浜市立大学教授(当時)が「環境ホルモン」なる造語を作り、当時の環境庁が「環境ホルモン戦略計画(SPEED '98)」として、内分泌撹乱作用が疑われる67の化学物質をリスト化したわけです。

騒動のきっかけになった、『奪われし未来』、アメリカで出版されたときの原題は、“Our Stolen Future”。ただし、“Are We Threatening Our Own Fertility,Intelligence,and Survival?―A Scientific Detective Story”なる副題が付けられていました。『私たちは自らの生殖能力と知性と生存を脅かしつつあるのか?―一つの科学的探偵小説』 とでもいう意味。なぜか日本で翻訳出版された時には、副題は消えていたのです。

研究費バブル

諸外国では、「環境ホルモン」に関しては、日本ほど騒いでおらず、日本の環境ホルモン騒動には、日本だけの事情があったと思われます。背景として、当時の環境庁は省に昇格する前で、その存在感を高めようと躍起になっていて、研究者も「環境ホルモン」の問題を煽れば潤沢な研究予算が得られる、いわば「研究費バブル」があったのです。

環境ホルモン空騒ぎ

騒動のさなか、中西準子・横浜国立大学教授(当時)が、『新潮45』に、「環境ホルモン空騒ぎ」と題して疑問を投げかけられました。最後に、こう結んでいます。

まず一番に環境庁はこの六七物質を疑わしいとした根拠を発表してほしい。どういう方法で測り、どの程度の大きさのホルモン特性をもっていたのでリストに載せたのかの根拠を。まさか、根拠もなしに発表したわけではないだろう。それが分かれば企業も同じ試験法で追試ができる。是非、環境ホルモンについての議論を科学的に冷静に進めるためにこのことをやってほしい。今のように危ない、危ないという議論だけだと、まもなく国民は麻痺して環境問題を真剣に考えることをやめてしまうのではないだろうか。その反動が怖い。

中西氏がこんな疑念を呈していることからして、SPEED'98のリストは、「疑わしいとした根拠」も明らかにせずに降ってわいたようです。

マスメディアは飽きた、火を消さない

ところが、そのSPEED'98のリスト、旗振り役だったはずの環境省が、河川水に含まれるほどの低濃度では、ヒトの健康に対する影響はないと考えられるとして、2005年に取り下げたのです。しかし、そのことは大きくは報道されませんでした。これはマスメディアの悪癖で、不安を煽るだけ煽って、火の始末をしないんですね。だから、今も市民の間には漫然と「環境ホルモンとは怖いものだ」「カップ麺の容器から環境ホルモンが溶け出す」といった不安がくすぶっているようです。

「メス化」の正体

ビスフェノールA(CDやDVDに使われるポリカーボネートの原料)やノニルフェノールが、女性ホルモンに似た作用をするとして、「魚のメス化の原因」と槍玉に挙げられましたが、生活排水の中には、「女性ホルモン様物質」ではない、女性ホルモンそのものが含まれているのです。女性の尿に由来する本物の女性ホルモンが「メス化」の正体だということです。それに比べれば、ビスフェノールAの影響などたかが知れているということです。

「ビスフェノールA」は「環境ホルモン」で、「ポリフェノール」は体にいい?

フードファディズムの一つでもありますが、赤ワインのポリフェノールが抗酸化作用・ホルモン促進作用が亢進するとして、一時ブームになりました。ビスフェノールAとポリフェノール、どちらもフェノール類、すなわちベンゼン環にヒドロキシル基がくっついた構造で、いわば親戚のようなものですが、かたや「環境ホルモン」として恐れる、かたや体にいいともてはやす、ヘンですね。体にいいからとワインを飲みすぎるとアルコール中毒になるのは言うまでもありません。環境ホルモンの「メス化」を恐れる一方で、ザクロ果汁は女性ホルモンを含んでいるともてはやす、もはや意味不明です。国民生活センターが行った、ザクロを使った健康食品のテスト(PDF)では、女性ホルモンは検出されなかったとのことです。

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