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フードファディズムとは

フードファディズム、聞き慣れない言葉ですが、「食品が健康に与える影響を過大に信じること」です。こう言われても未だピンとこないでしょうが、「おもいッきりテレビ」や、捏造問題で打ち切られた「発掘!あるある大事典」で、特定の食品が取り上げられた途端に、わっとスーパーから売り切れる、あの現象がそれだと言うと、まあなんとなくイメージは掴めると思います。

フードファディズム(food faddism)、和製英語ではなく、元々アメリカにあった言葉で、fadとは「流行」とか「のめり込む」という意味であり、要は「(食品に関する)流行かぶれ」ということですね。

この概念を日本で紹介したのは、高橋久仁子・群馬大学教育学部教授です。教育学部の教員になって、世の中に「○○を食べれば万病解決」だの「△△という添加物を摂るとガンになる」だの、変な情報が氾濫しているのが気になって、1991年にアメリカで出版された“Nutrition and behavior”という書物に出会い、『栄養と行動』と題して翻訳・出版したのがきっかけでした。

健康情報“娯楽”番組のカラクリ

高橋教授は、「あるある」や「おもいッきりテレビ」を録画して、「○○がいい」という情報が出れば、そのネタ元と思しき学術論文を探し出して、研究室の学生と一緒に検証することを行っていました。

「おもいッきりテレビ」で実際に放送されたというある内容を検証してみると、例えば、無関係な論文を恣意的に繋ぎ合わせて、「糖尿病を防ぐためには、少量のシナモンと適量のビールとナッツのつまみがいい」などとストーリーを仕立てていた、というものでした。しかも、ネタ元の論文のシナモンは「少量」ではなかったのです。

“娯楽”番組御用達の専門家

この手の、「健康情報“娯楽”番組」には、だいたい決まった“専門家”が常連としてよく出てくるようです。例えば、「おもいッきりイイ!!テレビ」で、「朝バナナダイエット」を推奨した某薬科大学理事、2006年にTBSの番組「ぴーかんバディ!」に登場して、白インゲン豆を炒ってご飯にかけるとダイエットになると言った人物でした。この時は多くの中毒者を出し、TBSに対する行政指導にまで発展しました。また、「あるある大事典」の「レタスを食べるとよく眠れる」という話題で、「レタスにはラクッコピコリンという有効成分が含まれていて、即効性があります」とコメントした大学教授は、捏造問題を取り上げたNatureのインタビューで、「我々はテレビタレントとして使われているのだ。だから指示通りにコメントする」と答えています。彼らは「テレビタレント」でしかないと割り引いてみた方がいいようです。

宣伝文は行間を読んではいけない

「バランス栄養食」を謳う某食品を、高橋教授は、成分表示から、「脂質が豊富な、ビタミンとミネラルが添加されたクッキー」と読み取っています。宣伝文というのは、効能効果を謳って薬事法に触れたりしない限り言いたい放題、効能効果を謳えないから、それらしいイメージをつけて売るというのが常套手段ですね。「燃焼系」を売っていた会社に高橋教授が「燃焼系とはどういう意味ですか?」と問い合わせたところ、「日常生活を完全燃焼させていただきたいという意味で命名した」という答えが返ってきたということです。どこにも、「脂肪を燃焼させる」とは言っていない。行間を読ませる宣伝手法はお見事ですね。商品の宣伝、キャッチコピーを読むにあたっては、行間を読まない、ものわかりの悪い人間でいるのが賢いことであるようです。

食品を「良い」「悪い」の二分法で決め付けるのはやめよう

「良い」とされる一方で、「悪い」というフードファディズムもありますね。牛乳に関しては、某医師の本がベストセラーになって、酪農団体から公開質問状を突きつけられたり、白砂糖とか(何故だか三温糖や黒砂糖は「いい」ことになっていたりする)、コーラとかマクドナルドとか、食品添加物や残留農薬など。結局のところ、これさえ摂れば万病解決という「マジックフーズ」もなければ、これを食べれば絶対ガンになって死ぬというような「悪魔フーズ」も存在しない、色んなものをバランスよく摂れという、当たり前でつまらない結論に行き着くわけですね。テレビは、その、当たり前でつまらないことを取り上げたところで視聴率に結びつかないから、何かインパクトのあることを取り上げようとしていると考えて、割り引いて見た方がいいようです。

悪趣味ではあるが……

私は、悪趣味かもしれませんが、「健康情報“娯楽”番組」の御用研究者(の皮を被ったタレント)や、「病気にならない」某医師が将来何で亡くなるか、注視することにします。高橋久仁子氏が鎌田實氏との対談で、このようなことを言っておられました。

実は、私が講演などで必ず例を出す3人の研究者がいます。お茶を丸ごと食べることを奨めたKさん、アガリクスの広告塔だったMさん、大豆を食べれば万病解決と説いたOさんです。Kさんは44歳、Mさんは69歳、Oさんは65歳で、いずれもがんで亡くなられました。「これを食べれば万全」と一般の人たちがあまりにも信じているので、悪趣味ですがあえてこの3例を出すんです。

マクロビオティックの普及者として有名な久司道夫夫人は皮肉なことにがんで亡くなり、久司氏自身も末期がんで死線を彷徨っています。

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