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トランス脂肪酸

トランス脂肪酸とは、「トランス型の不飽和結合を持つ脂肪酸」です。「シス・トランス異性体」とは高校の化学に出てきたはずで、例えば、天然ゴムは主にポリイソプレンのシス体から出来ているのに対し、トランスポリイソプレンは硬くてゴルフボールに使われます。またポリイソプレンのシス体65%トランス体35%の混合物はチクルといって、口の中で噛むと柔らかくなることからガムベースに用いられます。

トランス脂肪酸は危ない?

トランス脂肪酸は、マーガリン、ショートニングなどの製造で、植物油に水素を添加する過程で生じるとされ、多量に摂取すると心疾患のリスクが高くなるとされています。WHO(世界保健機構)とFAO(国連食糧農業機関)がトランス脂肪酸の摂取は1日総摂取エネルギーの1%とするように勧告し、アメリカ等では表示が義務付けられています(天然の食品そのものに含まれるトランス脂肪酸は表示義務の対象外)。

日本は、トランス脂肪酸規制後進国?

わが日本はというと、一部のコンビニやファストフード店がトランス脂肪酸軽減に取り組んでいる程度で、国や地方自治体、業界挙げての規制という動きは今のところありません。日本人の食生活では諸外国に比べてトランス脂肪酸の摂取量自体が少ないということですが、実はこの問題の裏は「食の安全」という科学の皮をかぶった、国際政治の駆け引きという生臭い事情があって、日本が性急に規制をしないのも政治的な思惑があるようです。

トランス脂肪酸追放に熱心な国

トランス脂肪酸追放にとりわけ熱心な国というのが実はいくつかあって、デンマーク、マレーシア、インドネシアです。デンマークはバターの生産国であり、マレーシアとインドネシアはパーム油の生産国です。デンマークの規制に関して、EUの他の国は食の安全に名を借りた非関税障壁・保護貿易だと批判しています。

トランス脂肪酸「だけ」を挙げへつらうな

トランス脂肪酸にリスクがあることは、現時点で見解はほぼ一致していますが、実際にどれだけ健康に影響を与えるかはまだ議論もあり、トランス脂肪酸「だけ」を挙げへつらう、トランス脂肪酸を追放すれば万事解決などと短絡的に考えずに、食生活全体のバランスを考えるべきだと思えます。

「トランス」という言葉のイメージ

トランス脂肪酸に関して、一部のメディアでは「狂った油」なる煽情的な見出しが使われました。「トランス」とは冒頭に記したとおり分子構造を指すのですが、「トランス脂肪酸」が怖がられているのは、食用油とは無関係な変圧器(トランス)→昔変圧器の絶縁油として使われていたPCB(ポリ塩化ビフェニル)→カネミ油症事件という連想でしょうか?

「ダイオキシン」は“dioxins”で、“di-”は2を意味する接頭辞なのですが(したがって、日本語でカタカナ表記するなら「ダイオキシン」ではなく「ジオキシン」と書くべき)、“die”(死ぬ)と“toxin”(毒)に語感が通じることが怖がられた一因としてあると思っています。

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